光の手触り—水谷 智美の陶が“石”から“気配”へ変わる瞬間
光の手触り—水谷 智美の陶が“石”から“気配”へ変わる瞬間
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光の手触り—水谷 智美の陶が“石”から“気配”へ変わる瞬間

水谷 智美(みずたに ともし)は、石のような硬質さと、ふわりと宙に残る“気配”を同時に狙う陶芸作家です。炻器(せっき)を主流に、唐津土と天草陶石を混ぜ、高温の初焼きと鉱物色料で微かな霧光を引き出す手法が注目されています。

福岡出身、2003年に愛知県立芸術大学で陶磁を学び、岐阜の築窯制作を経て、2015年に佐賀県多久市で工房を開設。作品は花入れやゴブレットなど日常の器に広がり、国内外の展示・販売で存在感を増しています。

項目 内容
作家名 水谷 智美(みずたに ともし)
生年 1977年
出身 福岡県
学歴 2003年 愛知県立芸術大学 陶磁専攻 卒業
制作拠点 岐阜県飛騨市で築窯制作→2015年 佐賀県多久市で工房開設
主な素材・技法 炻器中心/唐津土×天草陶石/高温初焼き+鉱物色料
代表作 石ころ花入れ、花入れ、ゴブレット、つのカップ、マグカップ(台形・丸型・サップ型)

水谷 智美とは——“石の質感”と“ふわり”の間を作る陶芸

水谷 智美の作品を最初に目にしたとき、多くの人が「硬そうだ」と感じます。けれど触れてみると、表面は冷たい石そのものではなく、微細な層や色の滲みが“息づく”ように見えてくる。そうした印象の中心にあるのが、彼女が主流に置く炻器(せっき)です。

炻器は、陶器と磁器の中間にある質感を持つ焼き物として知られます。水谷 智美はこの炻器の性格を生かしながら、唐津土と天草陶石という異なる地の土を組み合わせ、高温で初焼きを行います。そこへ鉱物色料を重ね、ただの着色ではなく“霧がかかったような微光”を表面に狙っていくのです。

彼女が目指すのは、自然と人間のあいだに立ち現れる存在感。言い換えれば、「説明できない感覚」を土に寄せることです。器が主張するというより、こちらの注意がふっと吸い寄せられる。そんな“佇まい”が作品の核にあります。

1977年生まれ、福岡から陶芸へ——愛知県立芸術大学での学び

水谷 智美は1977年生まれで、出身は福岡県です。陶芸の道へ踏み出したのは、学びの場を得てからのこと。2003年、愛知県立芸術大学の陶磁専攻を卒業しています。

この時点で彼女は「形を作る」だけではなく、素材と温度、そして焼成の結果に目を向ける視点を持っていたと考えられます。陶磁専攻での訓練は、作品の完成形を想像する力だけでなく、失敗の理由を解析する習慣も身につけます。後の“色の滲み”や“質感の設計”につながる土台がここにあります。

大学を出てからは、岐阜県飛騨市で築窯制作に従事しました。築窯は、焼き物の世界で最も目に見えにくい工程の一つです。炎の条件、窯内の空気の流れ、焼き上がりの再現性。これらを作り込む経験が、その後の作品作りに厚みを与えているのは想像に難くありません。

飛騨の築窯制作が残したもの

窯は、同じ土でも結果を変える装置です。水谷 智美が飛騨市で築窯制作に関わった経験は、素材選びの慎重さだけでなく、焼成の“癖”を読む力を育てた可能性があります。作品の霧光が偶然ではなく、工程の積み重ねとして成立していることを考えると、この下地は大きい。

唐津土×天草陶石——“炻器”で狙う霧光のレシピ

水谷 智美の特徴は、素材の組み合わせにあります。彼女は炻器を主流にしつつ、唐津土と天草陶石を混ぜて成形し、高温で初焼きを行います。ここで重要なのは、土の成分が焼成後にどう振る舞うかという点です。

その上で表面に鉱物色料を組み合わせ、色の出方をコントロールします。鉱物色料は有機染料のように“均一な色面”を作るより、発色や滲み、薄い層の重なりによって表情が変わりやすい。水谷 智美は、その揺らぎを生かして、石のような質感のまま“微妙に霧がかる”ような見え方を目指しているのです。

ここで言う霧光は、派手な光沢ではありません。むしろ、光が当たっても反射しきらず、表面の条件によって見え方が変化する種類の発光です。器が室内の明るさを受け止め、鑑賞者の視線を静かに引き寄せる——そんな効果が狙われています。

“ふわり”を設計するのは、言葉ではなく工程

自然と人間の間に佇む存在、という表現がありますが、実際には工程の連続がそれを支えます。初焼きで土の骨格を立ち上げ、鉱物色料で表面を“薄く整える”。この積み重ねが、説明より先に感覚へ届く質感につながっているのです。

佐賀県多久市で工房を開設——2015年という転機

水谷 智美の制作は、2015年に大きく動きます。この年、佐賀県多久市で自分の陶芸工房を開設しました。拠点が変わるということは、土の入手、温度管理、作業導線、そして生活のリズムまで含めて変わることです。

陶芸は「形」と同じくらい「環境」を必要とします。気温や湿度、作業の時間帯、道具の手入れ。工房ができたことで、これまでの学びや築窯の経験が、日々の調整として作品に反映されやすくなったと考えられます。

また、佐賀という土地は唐津土のイメージとも重なります。彼女が唐津土を取り入れている以上、物理的にも感覚的にも近い場所に材料と文化があることは、制作の持続性に関わります。

代表作のラインアップ——石ころ花入れから“つのカップ”まで

水谷 智美の作品は、単に鑑賞用のオブジェにとどまりません。日常の器へ自然に落ちていくラインがあり、その延長線上に花入れやゴブレット、カップが並びます。

代表作として挙げられるのは、「石ころ花入れ」「花入れ」「ゴブレット」「つのカップ」です。さらにマグカップは台形・丸型・サップ型など複数の形があり、手に持った時の重心や口当たりの感覚まで含めて設計していることがうかがえます。

“石ころ”という呼び名に見える通り、彼女の造形は自然物の輪郭を参照している面があります。ただし、単なる石まねではありません。表面の霧光、焼成の密度、色の滲み。その全てが合わさって、自然と人の距離感がちょうどよいところに落ちていきます。

器が持つ「使う前の時間」

花入れは花が入るまでが作品であり、カップは飲む前の手触りがすでに鑑賞対象になります。水谷 智美の器は、使用の瞬間より前に、じっと見てしまう時間をつくるタイプです。これは、炻器の質感と鉱物色料による微妙な表情が、光の当たり方で変化するためでしょう。

オンライン販売と実店舗——CONCEPT STORE & GALLERY ADU、UTSUWA

作品の流通も、作家の活動の輪郭を決めます。水谷 智美の作品は、オンラインショップとして「CONCEPT STORE & GALLERY ADU」や「UTSUWA」などで見ることができます。どんな土で、どんな温度で、どんな色料を重ねたのか——その背景が写真と説明で追える環境があるのは、購入者にとって大きい。

もちろん、直接手に取って確認できる実店舗での出会いも重要です。陶器は写真で伝わりきらない要素が多いからです。表面の微妙な霧光、厚みの違い、縁の丸み。店頭では、その差がすぐに分かります。

水谷 智美の器は“見て終わり”ではなく、“生活に置いたときの見え方”を想像させるタイプです。通販で購入する場合でも、展示写真や説明が丁寧であるほど、届いた後のギャップが減ります。

絵と陶のコラボ、展覧会の広がり——山口愛との共鳴

最近の動きとして注目されるのが、山口愛氏との絵と陶のコラボレーションです。陶器単体の魅力に加え、平面の絵が同じ空間に置かれたとき、色と光の関係は一段と見え方が変わります。

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